滋賀レポ【近江八幡プラン】
2019年12月6日(金)・7日(土)・8日(日)
(1日目 ティースペース茶楽→Basis Point→沖島民泊湖心)
11月に参加した【甲賀プラン】に続いて、2度目の滋賀レポとして【近江八幡プラン】に参加しました。
滋賀レポは、各地域のキーマンともいえるコーディネーターがプランを組み立て、魅力的なスポットを紹介してくれたり、その地域で活躍されている方とつなげる役割を担ってくれたりします。参加者の移住への思いもさまざまで、具体的に移住を考えている参加者が多かった甲賀プランでは、交流会でも暮らしの話題が多く出ました。
さて、今回の近江八幡プランです。
コーディネーターはフードバンクびわ湖の事務局長として活躍されている堀豊さん、参加者は東京から参加したTさん(20代・女性)、愛知から参加のNくん(30代・男性)、そして、横浜在住の私(40代・男性)の3人でした。経歴も年齢もバラバラの3人。移住への熱量もそれぞれでした。そんな4人が、近江八幡をキーワードに48時間をともに過ごし、地域の人たちとの出会いを共有するなかで、関係を深めていきました。
「僕は、近江八幡の観光スポットを紹介するのではありません。近江八幡の人を紹介してつなげたいんです」
“おせっかいが仕事”と笑う堀さんのアプローチは、人を知ることでの地域の魅力発信。「こんな人が、こんな思いを持って、こんな生活をしている」ということを知ることで、地域への理解が深まり、暮らしのイメージが広がっていきます。また、移住が具体的になったとき、その地域とつながりができていることは、さみしさや不安を軽減して、安心感を与えてくれます。
13時近江八幡駅に集合して、八幡掘の脇に建つおしゃれなカフェ『茶楽』で自己紹介を終えると、堀さんは車を守山へと走らせました。11月23日にオープンしたばかりの『Basis Point SDGs 滋賀守山店』は、2時間まで500円、2時間以上でも1,000円と格安で利用できるコワーキングスペースです。しかも高級紅茶のムレスナティーが飲み放題。オーナーの増村匡人さんが出迎えてくれ、人をつなげる場所として活用されているコンセプトを教えてくれました。
SDGsとして活動される増村さんは、自身が儲けることを考えるよりも、少しでも世の中をよくしたいという熱い思いにあふれています。スリランカのムレスナティーを現地の方を支えるために輸入して販売した経緯、自然電力を選択することの大切さを教えていただきました。
1日目の宿泊は、琵琶湖に浮かぶ沖島での民泊です。
日本で唯一、湖上の島で人が暮らしているのが沖島です。堀切港より定期船で10分とアクセスがよく、観光要素にあふれているのですが、観光客はほとんどいません。おだやかな雰囲気のなか、琵琶湖で漁業を営む200人ぐらいの人たちが生活しています。
塚本千翔さんが管理する民泊湖心(koko)に到着したのは、18時30分ごろ。沖島でカフェなどを経営している奥村ひとみさんが用意してくれていた琵琶湖の魚料理が、こたつのテーブルいっぱいに並べられていました。
「島内は日常的に漁師を営む方が多く、朝早く出航します。生活を妨げないように夜は静かに過ごしてください」と注意事項を伝える塚本さん。地元のおいしい料理にお酒がすすみ、つい盛り上がってしまいそうな居心地のよさですが、地元の人たちと摩擦が生じてしまっては観光業も成り立ちません。日常では味わえないような静寂を味わうことも、沖島の魅力の一つのようです。
「すごもろこの佃煮、ふなのフライ、琵琶湖の小エビ、酢の物、沖島でとれた野菜、沖島の味噌を使ったあえ物……。お弁当にして、たくさんの料理を詰め込むと皆さん喜んでくれるんです」
奥村さんの料理の紹介を聞くだけで、どれだけ時間と手間をかけて用意してくれたかが伝わってきます。お弁当とは別に煮つけや小鉢が並び、ご飯のおかわりが止まりません。
「これからは鮒のシーズン」ということで、再訪の際は、沖島の鮒鮨をいただくのが楽しみになりました。
食事のあとは、堀さんの提案で、ゲームをしながら夜が更けていきます。参加者3人も次第に打ち解けて、それぞれの仕事や地元の話をするなど、静かな語らいは明け方近くまで続きました。
(写真 キャプション1)
居心地のいいBasis Point。増村さんを囲み、貴重なお話を聞いた
(写真 キャプション2)
塚本さんから沖島で宿泊する説明を聞く。民泊初体験!
(写真 キャプション3)
おいしそうな沖島での夕食を前に、テンションが上がる4人
(2日目 沖島民泊湖心→八幡堀カヌー体験→自然野菜農家の皆さんの忘年会参加→民泊宿泊)
漁船が出航するエンジン音を聞きながら、うつらうつらとするなかで、沖島の朝を迎えました。早起きした若い2人は、沖島の朝を散策中。追いかけるように外に出ると、澄んだ空気に包まれていました。湖心から歩いて1分もかからずで、琵琶湖の雄大な景色が広がります。突き出すような桟橋に立つと、琵琶湖の真ん中にいることを実感できます。漁船が見えるのに、潮の香りがしないというのも不思議なものです。
朝食には、ビワマスの厚みのある切り身が並びました。これまたご飯がすすみます。夏は、ビワマスの刺身が絶品ということです。お昼ごろまで沖島でゆっくりして、午後は再び定期船に乗り、堀切港へ。おいしいパン屋さんで昼食をすませたあと、八幡堀でカヌーを体験しました。
情緒あふれる八幡堀は、映画やドラマの撮影で頻繁にロケ地となる観光名所ですが、昔、においが気になるという住民の人たちのなかで埋めてしまおうという話もありました。しかし、歴史的財産を大切にしようという方たちが力を合わせて整備して、大切に保存してきたからこそ、今の時代に江戸の情緒がよみがえります。
観光客を満載した屋形船が行き来するなか、お堀でカヌーのオールを漕ぐというのも、貴重な体験となりました。近江八幡親父連の皆さんが、カヌーの漕ぎ方から、八幡堀の歴史などもあわせて、ていねいに教えてくれました。3人の参加者のために親父連から4人も集まってくれたことも驚きでした。しかも参加費500円! 3人乗りのカヌーではオールを1本持ち、ディズニーランドのように掛け声に合わせて、オールを水面に入れました。八幡堀の端から端まで、1時間ほどの船旅を楽しんだ後、1人乗りのカヌーも体験させていただきました。1人乗りなら購入しても3万円ほどということ。慣れれば八幡堀を出て西の湖へ。さらには琵琶湖でも楽しめるということで、移住後の新たな趣味となるかもしれません。カヌーの後は、近江商人の旧家やヴォーリズ建築の洋館などを紹介していただき、街歩きを楽しみました。
この日の夜は、古民家を改装して暮らしている藤木良明さんのご自宅で開催される忘年会に参加させていただきました。自然農法による野菜を栽培している皆さんが中心となった忘年会で、皆さんでおいしい野菜やご飯、地元のお酒、高級な鮒鮨などを持ち寄り、飛び入り参加のような私たちのことも温かく迎え入れてくれました。1人10分と割り当てられた自己紹介だけで、ほぼ時間となってしまったのですが、皆さんのお話をずっと聞いていたいような、楽しい時間を過ごすことができました。
2日目の宿泊も、近江八幡の民泊を利用。地域を盛り上げようと活動されている細垣ともこさんの家でお世話になりました。忘年会の熱気そのままに、居心地のいいリビングで語りが止まらない参加者の3人。たくさんの経験をして疲れているはずなのに、この日も朝方まで語りつくしました。
(キャプション 4)
湖心で用意していただいた朝食のビワマスは絶品!
(キャプション 5)
民泊を管理する塚本さんと一緒に記念撮影。友人を連れて再訪を誓う
(キャプション 6)
親父連の皆さんのサポートでカヌーを操船! 皆さんの笑顔で楽しい時間に
(キャプション 7)
地元の皆さんの忘年会で鮒鮨も初体験。Facebookの友人にもなり、これからもお付き合いが続きそう
(3日目 民泊→山梶農園で農業体験)
細垣さんにご用意いただいた朝食を食べて、3日目がスタートしました。
この日は近江八幡市で安土信長葱を生産している山梶農園を訪ねました。収穫した葱が山のように積まれ、1本1本手に取り、土がついた皮を吹き飛ばしていた山梶さん。お忙しい作業中にもかかわらず、これからの農業ビジネスに関するお話を聞かせてくれました。農業は私たちが生きていくうえで欠かすことができない、とても重要な産業です。工夫や経験で、生産量が上ったり、おいしく育てたりできるのですが、「自分の農家だけがよければいい」という考え方では成り立ちません。
「冬に葱が育たないからといって、土を盛って栄養を与えても、それではおいしく育たないんです。思うように育たなくても我慢する時間が必要。その時期が過ぎると葱はおいしく育っていくんです。経験で知っていることは、他の農家さんとも共有して、地域をあげてさらにおいしい農作物を作っていくことが、ブランド力アップにつながっていきます」
農業の世界では、技術の共有と拡散が必要と梶山さん。そのなかから、さらに独自のビジョンを持ち、ビジネスに結び付けられるかで、他とは違う経営が実現するようです。山梶さんは農園レストランの構想を持っていて、息子さんが料理の修行中とのこと。近江鉄道沿いにひまわりを咲かせて、地域の魅力を高めようと取り組んでいたり、寺社と連携してブランド力を高めようとしていたりと、豊富なアイデアの一端を聞かせてくれました。
私たちも農業体験させていただくということで、葱の土と皮を飛ばす機械を使わせていただきました。単純作業のようでコツが必要。少し曲がっているネギはB級品の箱へと仕分けされていきます。おみやげに持たせていただいたたくさんの葱は甘く、シャキッとしていて、家に帰ってから鍋に大量に入れておいしくいただきました。
3日目のスケジュールは、山梶農園さんの訪問で終了となりました。昼から予定のあった私は、近江八幡駅で車を降り、少し早い解散となりました。
今回の体験で特筆すべきは、コーディネーターとして各地を案内してくれた堀さんの存在です。新しい土地を訪れるとき、いかに心を開いていくのか。移住でも、地域に溶け込むまではさまざまな壁や苦労があると想像されます。そんなとき、「こんなアプローチをすれば地元の人と仲よくなれるんだよ」と、ヒントをもらったような、3日間の近江八幡プランとなりました。
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民泊させていただいた細垣さんの家で、さらに交流が深まった
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葱や大豆を生産している梶山さん。地域活性化のアイデアも豊富
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おみやげの葱を手に記念撮影