-移住に至った経緯を教えてください。
小さい頃から歴史が好きだったので、大学では日本史学科を専攻して、お寺と地域社会の関わりを研究するかたわら、プライベートで歴史的な建物や仏様をいろんな地域に見に行っていました。滋賀も仏様が多いことは聞いていたので遊びに行ったら、大切に守られている仏様や守っている人たちが大好きになって、いつかは滋賀に住むのもありなのかな?とぼんやり思っていました。しかし、その当時は仕事をどうやって作るのかわからず不安で、一旦、地域活性に関われる仕事に就こうと人材系の会社に入りました。
(前職で関わった仕事「火の鳥-ニジゲンノモリ」)
2~3年経って仕事は楽しかったんですが、自分のやりたいことをするために転職しようと思っていた矢先、長浜市の「観音の里プロジェクト」という起業型の地域おこし協力隊の募集を見つけました。見つけた瞬間「これだ!」と思い、すぐに面接を受けました。
「起業がしたいわけではありません、でも長浜の仏様が好きなので頑張るつもりです!」と宣言し、採用されました(笑)私にとって「起業」はハードルが高かったんです。移住する前は起業がしたいわけではなく、どこかで勤めながらでも仏像と関われたらいいな、と思っていました。
-地域おこし協力隊になってからはどんなお仕事をされているのですか?
今は、フリーランスで「観音ガール」として活動をしています。観光PRのコンサルティングや調査事業、ライターなど、幅広く活動しています。仏像が絡まない案件もありますが、仕事で仏様を案内できたり、貴重な仏様を調査でみれたり、自分の好きなことで楽しく仕事させてもらっています。
-地方で一から仕事を作るって非常に難しいことだと思うのですが、對馬さんの場合はどのように仕事を作られたんですか?
お金にならないような小さなことでも、調査事業やイベントなど、とにかくたくさん実績を作ることを意識していました。だから、話をもらったら、まずはやってみることを大事にしていて、メディアや講演会にお声がけ頂いたらやったことがなくてもやっていました。他には、その実績をいろんな人に伝えてもらうことですね。例えば、商工会の方と仲良くなって飲み会で話題にしてもらうとか、小さいことの積み重ねです。今は、だんだんと自分の名前が広がっていっている段階かなと思います。
-たくさんの方に出会う中で気付いた滋賀の良さは見つかりましたか?
仏さんの話になってしまいますが(笑)、長浜で仏像を守っている方はまるで孫のようにかわいがっているんですね。みんな、「自分のところの仏さんが一番やわぁ」と、プライドを持って接していることや、「うちの仏さん、良いでしょう」と触れさせてくれるような近い距離感も長浜ならではなのかもしれません。
あと、滋賀は地方ですが、田舎すぎず都会にも近いことが特徴かなと思います。実際、京都で働いている方も多く、感覚が都会の感覚を持っている方が多い印象です。滋賀だとまず話は聞いてくれたので、それだけでもありがたかったですね。
ですが、私は東京から来たのでギャップもあります。何かお願いごとをしたときに、相手が「考えとく」と言うじゃないですか。私にとっての「考えとく」は7割くらいは考えてくれているかな、と思っていたんですが、関西だと99%、流されてしまうんですね。言葉の違いに最初は苦労しました。
-言葉のニュアンスの違いは難しいですよね。今は、仕事の幅を広げていっている段階だと思いますが、これから取り組んでいきたいことはありますか?
簡単な調査・記録を、仏さんを守る方々だけでなく、ほかの地域の方とも行いたいですね。仏さんを大切に守ってきた村の方の想いを一緒に感じて、仏さまを守り、伝える方法をいろんな方と一緒に考えたいので。私は大学で文化財について学んでいたので心得はありますが、専門家には及びませんので、地元の学芸員さんにもご報告して「仏像の保存方法など」より専門的なアドバイスのもと進めています。。まずは、自分のできる「聞き取り調査」や「記録をとる」ことなど、小さなところから仏さまを守る仕組みの事例を長浜から作る。さらに、その事例を活用して、滋賀全域へ、全国に広げて、仏さんの面白さを伝えていきたいなと思っています。
-今日對馬さんのお話を聞いて、仏様への見方が変わりました。最後に、今後移住を検討している人にメッセージをお願いします。
「地域おこし協力隊」の制度って、受け入れ体制やテーマと、自分のやりたいことや好きなことが合っていると、とても便利な制度だと思います。自分の実績を作れる期間でもありますし、私は経験を積んでいく中で自分の得意なことや苦手なこともだんだんわかってきました。さらに、長浜はモチベーションが高い方が多く、協力的な方が多いので、何か新しいことをやろうとするときに、一歩を踏み出しやすかったですね。
-あとがき
仏様の魅力は歴史的な視点ではなく、仏様自体のカッコ良さやそれを守っている方々の優しさ、と對馬さんは語ります。長浜から全国へ。仏様の魅力が長浜から全国へと伝わっていけば嬉しいなと思います。對馬さんありがとうございました!
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