-Uターンとのことですが、そもそも滋賀を出たきっかけは?
最初は大学進学で奈良に行ったことです。自営業の家に生まれて、名前も珍しかったので、「あの石地さんところのお子さん」「お父さん最近どうしてはるん?」といつも言われていました。親や家に縛られている感じがものすごく嫌だったので、大学は地元から出たいと思い、奈良県立大学の地域創造学部に入りました。
この学部を選んだ理由ですが、実は、長浜は観光まちづくりのパイオニア的な存在で。将来、何かしらの形で地元に貢献できたらいいなと思っていたので、在学中はまちづくりのイベントをしたり、ソフトボール部の仲間と遊んでいたり(笑)楽しかったですね。
就職活動の時期になり、地元に帰ろうと思っていましたが、当時はリーマンショックと東日本大震災があったばかりでした。文系だったので全然就職先がなく、実際長浜市の会社説明会に行っても、「うちは理系しかとらへんから、帰って」と一蹴されてしまって。
やっぱり地方の会社はあかん、都会の会社に就職しよう!と方向転換したところ、たまたま人事の方と話が合い、大手の会社に内定を頂き、東京で人材サービスの営業をしていました。
はじめは全然成績も出なかったんです。同期のほとんどが都会の超有名大学ばかりだったので、「まあ、そんなもんやろ」と焦ってはいなかったですね。
2年目になり、成功も失敗も色々ありましたが、仕事は面白かったですね。その時は、たくさん勉強もしましたし、個人的に転職相談を受けることも。自分に自信がでてきたのもあり、一気に成果が出るようになりました。
-成果も出て、仕事も楽しいはずなのに、どうしてUターンをしたのですか?
3年目になって、初めて部下を持ちました。その子はすぐに泣いてしまう子で。自分のノルマもこなしながら、後輩を指導していました。頑張ってはいましたが、結局、後輩は半年で辞めてしまいました。そんな状況で追い打ちをかけるように、数字至上主義の上司が着任。僕は一人ひとり丁寧に粘り強くいきたかったのですが、上司は「とにかく数をとってこい」の一点張り。人格を否定された気持ちでした。もうダメだ、と辛すぎて、親に電話をかけたら、「帰っておいで。仕事はなんとかなるやろ。」そのとき初めて親の前で泣き、地元に帰ろう、と決めました。
今の会社に入ったのは、親のつながりからでした。たまたま、当時の担当の方が親の元部下に当たる方で。電話をしたら、「ああ~、石地さんのお孫さん。一度話聞きにおいで~」と。面接のつもりで会社にいったら、面談でした。転職活動もしていたので、他に2社から内定を頂いていたのですが、繋がりやご縁は大事にしようと、立売堀に入ることを決め、面談後はとんとん拍子でした。
人事の職に就いたのは、前職で人材紹介のサービスで触れていたこともあり、ずっと憧れがあったからなんですね。はじめは、採用の仕組みも全然整っていなくて、一から仕組みづくりをしました。今では、面接や合同説明会の出展、インターンシップの企画、新入社員研修などの人事に関する仕事以外にも、経理、総務の仕事もしています。前の仕事と比べて、自分ができる仕事の幅が広がったなと感じています。人がたくさんいるわけではないので、自分で最初から最後までやり切る一貫性があることは地方の会社ならではの良さだなと思います。
人事は人の役に立つ仕事ではありますが、人の人生を決める仕事でもあると思います。だからこそ、自分自身の介在価値があると思うし、責任を感じながらお仕事をさせてもらっています。
-地方の会社で無かったものを作ったり、構築する上では苦労もあったと思いますが、大切にしていることはありますか?
信念を持ちながら、柔軟性を持つことです。2回、3回、4回、5回、と何度も説明して、やっと提案が通る。地方の会社ならではの保守的なところも正直あります。ずっと同じものを変えるのはエネルギーがいるし、正直しんどく思う時も多々あります。でも、そこまでしてでも頑張れるのは、会社に愛があるからだし、応募してくれる人に対して責任があるから。だから、絶対に妥協はしません。妥協しないために普段から意識していることは、「巻き込むこと」です。一人では、出る杭打たれてしまうので、同僚や上司を巻き込んで、役員に提案することを意識しています。自分のやりたいことをやるためには、社内営業や根回しも必要なことだと思ってやっています。
-地方の会社で生きるコツは、「巻き込み力」。プライベートにも通じることがありそうですね!ぜひ石地さんの思う、滋賀の好きなところや魅力もお聞きしたいです!
まずはのどかなところですね。春はぽかぽかして桜がきれいだし、風が吹いて気持ちいい。食べ物も美味しいですね。近江牛やお米も最高。いいところだらけですね!東京や大阪に比べて、人も少ないので住みやすいと思います。
あと、滋賀レイクスターズがあることですね!滋賀のバスケットボールチームなのですが、試合の度に観戦しに行っています。こないだは試合を見るために東京遠征してきました。
レイクスターズが好きになったきっかけは、自分と似ているなと思ったことからなんです。全然強いチームじゃないところ。もともと弱小チームで、スポーツ不毛の地である滋賀で、弱いながらも懸命に頑張っているところを自己投影させていて。生まれ持った天才ではないからこそ、常に悔しいな、という気持ちを持ちながら一緒に成長していける。だから応援したくなるんです。
応援を続けていたら、だんだん友達も増えてきて、滋賀ならではの人のつながりの強さを感じています。滋賀の人の特徴として「滋賀は、滋賀だ」と、等身大でいる方が多いなと思います。自分を大きく見せずに、大阪や東京などと比べない。つながりも、つかず離れずという感じでちょうどよい距離感が居心地の良さなのかな、と思います。
-共に成長していく感覚ですか。確かに応援しがいがありそうですね!また試合の際にはご一緒させてください。最後に、今移住を検討している方に向けて、メッセージをお願いします。
感じている滋賀の魅力はたくさんありますが、ガイドブックとかには出ていないんです。意外と交通の便はいいので、まずは一度見に来て、直接感じ取ってほしいなと思います。目に見える良さより、人の良さや、なんでもない自然の良さ。県民性として「三方良し」の考えが根っこに浸透しているので、「誰かのために」と思って暮らしている人が多いですね。さらに、分け隔てなく仲良くしてくれる県民性もあるなと感じています。
だから、住み始めてからは「ちょうど良さ」を感じてもらえると思います。琵琶湖のきれいさに感動しますし、遊ぶところも意外とあります。「滋賀田舎だと思っていたけど、意外と住みやすい!」という感じで。実際、転勤してきた方がそのまま住むケースもけっこう多いです。都会ではないけど、ド田舎でもないので、田舎生活をやってみたいと思う人のはじめの一歩としては、一番おすすめかもしれません。
-あとがき
確かに、滋賀の良さは伝わりにくいかもしれません。でも、一度足を運べば滋賀の良さをきっと感じる。なんでもない自然に感動したり、ついつい誰かに話したくなってしまうような面白い人たちに出会えたりすることもあります。ぜひまずは足を運んでいただいて、滋賀を感じてほしいなと思います。石地さんありがとうございました!