1st day 11/28「生きる力をくれる土地」
こんにちは!11/28,29の二日間、2歳の娘を連れて滋賀県大津市葛川へおためしステイに行ってきました。
私は大阪生まれ、大阪育ちで、就職を機に大阪を離れました(現在は関東在住)。子どもが生まれた今も、年に何度も帰省するほど関西愛に溢れていると自負していますが、意外と遠い大阪—滋賀の距離に阻まれ(?)、実は数えるくらいしか滋賀の地に足を運んだことはありません。そんな私が今回この葛川のツアーに参加した一番の大きな理由は、「もっとのびのびと、地域ぐるみで子育てがしたい」という思いがあるからでした。夫婦ともに両親が大阪という遠方にいるため頼りにできず、どうしても自分たちだけで生活をしていかなければならない日々は、本来なら楽しめるはずの子どもとの時間も十分に楽しめていない様に感じることがあります。地域ぐるみで子育てができる場所が地域にはあるのではないか、という思いから、色々なご縁があって知ったこのしがレポの仕組みを使って、今回葛川に伺うことになりました。
最寄り駅であるJR堅田駅で迎えてくれたのは、いろあわせの図司さん。葛川までの30分の道中で、私と同様就職で東京に出た図司さんに、地元である滋賀に戻られた経緯や、滋賀での暮らしなどを聞かせていただきました。葛川に到着すると、この30分ですっかり変わった景色にまず驚きました。森に川に、しっとりした空気。そして静かな存在感を放つ茅葺屋根の古民家。今回のツアーで終日お世話になった澤井さん夫妻がその古民家で、囲炉裏にあたりながら葛川の暮らしや、有志の皆さんが運営する村づくり協議会についてお話をしてくださいました。
娘は旅好きな私たち夫婦に国内外、色んな場所に連れ回されているため、あまり場所見知りをしないのですが、今回の葛川では茅葺屋根を見た途端、「わー、すごい!」とダッシュ。色づいた紅葉に喜びの声をあげ、囲炉裏の周りをウロウロ。挙句は、まだ「初めまして」したばかりの澤井さんの手をとり、古民家でかくれんぼをしようと言い出す始末でした。
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<写真①>
囲炉裏にあたりながら、澤井さんお手製のカレーをいただく。村の子さながらに馴染んでいる娘。
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午後からは、ちょうど授業参観をしていた葛川小学校へ。大阪の片田舎とは言えベッドタウンで生まれ育った私にとって、ひと学年ひとクラスという少人数で授業をしている様子はとても新鮮でした。先生から生徒へ一方的に授業をするのではなく、先生と生徒が対話形式で、しかもそこに親御さんも混ざった三者での授業スタイルは、狙ったものではないかもしれませんが、とても面白く斬新に見えました。また、校内は魚の入った水槽であふれていて、魚好きの娘は大喜び。澤井さん(旦那さん)の手を取って(もはや葛川のおじいちゃんだと思っている様子)、移動水族館と銘打った水槽を一つ一つ鑑賞していました。後に聞くと校長先生が大の魚好きだそうで、休みの日も餌をやりに学校に行っている、という噂が保護者の間であるくらいだそう。少人数の学校だからこそ、先生、生徒一人一人の顔が見えるのだなと感じました。そして、何より驚いたのは「Lunch room」があること!隣に隣接する中学校の生徒と一緒に、お昼の自校給食を全校生徒で食べるそう。私は大人数で食べるご飯は格別に美味しい、と思っているので、この仕組みがとても羨ましく感じました。
学校見学の後は、空き家見学へ。同じく村づくり協議会の宮崎さんが、村内のいくつかの空き家を紹介してくださいました。私は古民家にとても興味があるのですが、改築される前、メンテナンス前のお家に入るのは初めての経験でした。仏壇やご先祖様の写真、残されたままの日用品など、住んでいた方の気配が残るお家にお邪魔するのは、とても不思議な気持ちになりました。ここでも娘は大はしゃぎ。狭い我が家とは違って、広々とした部屋がたくさんあるので、走り回る。宮崎さんの経営する民宿も含め、計三軒のお家を見させていただいたのですが、探検家さながら物怖じせずに、一人どんどん家の中に入っていく様子を見て、今まで知らなかった娘の好奇心の強さを知りました。
後になって協議会のメンバーの皆さんから、空き家がどんどん増えているが、昔からの風習で、空き家になっても売却したがらない持ち主がまだまだ多い、という話を聞きました。色々な理由や背景があるようですが、人が住まなくなるとどんどん朽ちていってしまう建物の姿に、心を痛めている村の方がとても多いようです。葛川の森と川といった豊かな自然ももちろんですが、古い家がずらっと並ぶ景色に葛川の魅力を感じました。髷(まげ)の形のような、ちょこんと突き出した屋根の形がとてもチャーミングでした。
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<写真②>宮崎さん民泊にて
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空き家見学の後は、今回宿泊させてもらった宮田さんのお宅へ。先に見させてもらった宮崎さんの経営する宿もそうですが、なんとほとんど全てご自身で改築したというお話を聞いてびっくりしました。もともとの柱や備え付けの家具はそのままに、床や天井、照明から、インテリアまで、全てがしっくりその家に馴染んでいて、とても居心地の良い素敵な空間を作ってらっしゃいました。兵庫県西宮からIターンで葛川に来られた宮田さんは、ここで生活をしていくうちに本業のカメラマンの仕事以外に、家や家具まで作られるようになったとおっしゃるので驚き。曰く、「自分でやるしかないから出来るようになった」とのこと。改築前の空き家をついさっき見てきた私は、あの家をここまで快適素敵空間にできるなんて・・・!とただただ、尊敬の眼差しで宮田さんのお話を聞いたのでした。
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<写真③>宮田さん宅様子
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夜は協議会の皆さんを中心に、何人かが食事を持ち寄ってパーティを開いてくださりました。メンバーの皆さんは、葛川で生まれ育った方もいらっしゃいましたが、結婚を機に移ってこられた方、宮田さんのようにこの地を気に入り、移住してこられた方もいらっしゃいました。まだ移住についてしっかりと決心していないまま、ひとまず訪れてみた私たち親子を温かく迎え入れてくださり、静かに、しかしとても熱く、葛川という地で暮らす魅力について語ってくださいました。特に私が印象に残ったのは、「この土地で暮らしていることが幸せだ」ということを、皆さんが感じられていることでした。葛川の魅力は、「通えるド田舎」、「みんなで協力しあって暮らしを作る」、「自治体ではなく地域のメンバーが主体」だそうです。「通えるド田舎」というのは、葛川の中学生が付けたPR用のキャッチコピーだそうで、京都へ1時間、福井へも1時間で行ける利便性の良さがある一方で、自然も豊かな土地、という魅力を端的に表したコピーだと澤井さんがおっしゃっていました。そして、地域の人たちが、移住してきた人たちを温かく受け入れ、生活のために色々なお手伝いをしていること、そしてそれが行政主導ではなく、地域の方々が有志で行なっていることは、他の地域ではなかなか見られないことだとおっしゃっていました。
移住を考えたときに、不安要素の一つに「地域の人たちとうまくやっていけるか」があると思います。村づくり協議会の皆さんは、そんな不安を払拭してくださる心強い存在だと感じました。
この日は一日中雨が降り、非常に寒い日でしたが、翌日仕事や学校があるにも関わらず、交流パーティのために集まってくださり色んなお話を聞かせていただくことができました。娘も小学生のお兄ちゃんお姉ちゃんと遊んでもらって、親子共にとても心温まる時間を過ごしました。
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<写真④>パーティ様子
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2nd day 11/29「まずは、また遊びに来てね」
二日目は昨日の雨が嘘の様な晴れ間で、空の青さや森の木々の紅葉がとても綺麗に見えました。朝、少し宮田さん宅の庭(庭という言葉の定義が変わる、広大な庭でした)を散歩させてもらいました。夏は川沿いでBBQもできるそうで、夏の葛川も訪れてみたいと思いました。
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<写真⑤>安曇川
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今日のメインは仕事場訪問でした。元々ものづくりというテーマでの仕事に関心があったので、ものづくりや地場産業を営む職場にお邪魔したい、という希望を聞いていただき、林業を営む田辺造林さんにお邪魔しました。あいにく木を伐採しているところは見ることができませんでしたが、副代表の有田さんにお話を聞き、夫婦揃って興味があればぜひ、と温かいお言葉をかけていただきました。木々の伐採や搬出から、薪になる木の切り出し、切り出した木を使ったキノコの栽培など、お仕事は多岐にわたり、また、その仕事がどれも葛川の暮らしに密着したものであることに、「本来仕事ってこうものよなあ」と働くとは何かということを考えさせられました。
私の都合で昼には堅田駅に戻るスケジュールでお願いしていたため、仕事場見学をした後は、澤井さんが事務所管理をされている明王院に少しお邪魔して、葛川のツアーは終了となりました。
二日間という短い時間では、まだまだ全ての葛川の魅力に触れたとは言えませんが、京都まで1時間という立地にあるとは信じがたいほどの自然に恵まれた土地に、昔から地域の人が生活を営んできた家々が並ぶ風景、そして、葛川のために有志で活動をされている協議会の皆さんとの出会いは、私にとって今回のツアーに参加した大きな収穫になりました。まだすぐに移住に踏み切れない私の気持ちを知ってか知らずか、皆さんがおっしゃってくださったのは、「まずは、良かったら一年に一度でも良いからまた遊びにきてよ」という言葉でした。あそこに行けばあの方々に会える、そんな場所が自分の中でまた一つ増えたことはとても嬉しいことです。来年の夏は今回行けなかった夫も連れて、安曇川で水遊びをすべく葛川を再訪したいな、と考えています。
葛川の皆さん、この度はありがとうございました!
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<写真⑥>澤井夫婦と娘
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