滋賀移住体験【甲賀プラン】 2019年11月15日(金)・16日(土)
(1日目 かもしか荘)
秋も深まり、山々も色づき始めた11月中旬、移住体験の甲賀プランに参加しました。
甲賀といえば、三重県の伊賀と並んで、忍者の里として知られています。集合した貴生川駅から車に乗り、1号線を土山(三重)方面へと走らせること約40分。野洲川に沿って北上し、青土ダムを越え、さらに山の奥へと進んだ鈴鹿山系のふもとに、『大河原温泉 かもしか荘』はありました。美しい自然と調和した、2階建てのおしゃれな宿泊施設でした。
「地元を活性化したくて、社員一同、心を込めておもてなししています」と熱く語ってくれたのは、林初広社長です。甲賀忍者に扮してお客様を楽しませたり、キャンプ場のトイレや炊事場を自ら掃除して磨きあげたりもするそうです。そのホスピタリティから甲賀という地域を大切にして、魅力を知ってほしいという熱い思いが伝わってきました。
そんな地元愛から誕生した人気メニューが『ダムカレー』です。ダムをモチーフにしたカレーライスですが、かもしか荘でメニュー化したのは全国的に人気になる前のこと。「地元の食材を楽しんでほしい」と考案されたメニューは、めずらしいジビエを使ったカレーとなりました。
野洲川ダムカレーは鹿肉のカツレツ、青土ダムカレーは猪肉のしぐれ煮が添えられていて、どんな味か参加者も興味しんしん。今回は全員で野洲川ダムカレーをいただきました。脂身のない鹿肉は食べやすく、カレーとの食べ合わせもバッチリ。ダムを泳ぐワカサギフライもユーモアが効いています。食べ放題の新鮮サラダやスープもとてもおいしく、食べきれないほどのボリュームでした。お腹を満たした後は、林社長自らがかもしか荘の各施設を案内してくれました。
宿泊棟の部屋数は10室と少なく、鈴鹿山系の山並みと野洲川を見晴らすそれぞれの部屋は眺望もよく、ゆったりとくつろげそうです。
「甲賀市から指定管理者として指定されたとき、規定で部屋数を増やすことができなかったのですが、採算をあげるためにさまざまな努力をしてきました」と林社長。そのなかで誕生したのが、野洲川対岸に広がるオートキャンプ場です。テントを張ったり、キャビンを借りてバーベキューを楽しんだり。かもしか荘の大河原温泉を利用できるので、お風呂も安心。グランピングブームもあって、今では予約が取れないほどの人気ということです。
移住プランの参加者に、3時間ほど付きっきりで案内してくれた林社長。
「若い人が減っている地域です。従業員を募集しても、なかなか人が集まらない。今は台湾からきている人に声をかけたりしています。たくさんの人に甲賀のよさを知ってもらって、この地域に住んでもらいたい。この移住体験の話を聞いて、『これは、私が伝えなくては!』と感じて、今日はお話しさせていただきました」
皆さんに名刺を配り、「いつでも連絡してください」と話す林社長の姿に、とても心強く感じた、かもしか荘の訪問となりました。
(01)鈴鹿山系の美しい紅葉に包まれるかもしか荘
(02)レストランからのすばらしい眺望を見ながら、かもしか荘に込めた思いを熱く語る林社長
(03)野洲川ダムカレー(1,500円+税)はボリューム満点
(04)社長自らがピカピカに磨くというキャンプ場の炊事場
(05)グランドゴルフ場では地元のおじいちゃん、おばあちゃんが元気にプレーしていた
(06)宿泊客の子どもから「一緒にお風呂に入ろう」とせがまれる林社長
(1日目 交流会)
「琵琶湖が恋しくて滋賀に帰ってきたのに、琵琶湖がない甲賀に住んでるんですよ」
交流会で、おいしいシフォンケーキを焼いてくれた西村さんは、そう言って笑顔を見せました。滋賀県の南端に位置する甲賀市は、県の1/6を占める琵琶湖に面していない地域です。冬は寒く、雪が積もっていなくてもスタッドレスタイヤは必ず装備しなくてはいけないということ。夜は鹿が飛び出してくるので、要注意。軽自動車だと廃車になってしまうほどの衝撃があるそうです。
土山の公民館を借りて行われた交流会は、豚汁を用意してくれた大隅さん、コーヒーを入れてくれた平子さん、駆けつけてくれたJAの前田さん、甲賀市役所の谷口さん、近くで立命館大学のプロジェクトに参加していた高校生も加わって、にぎやかな集まりとなりました。
あたたかいおもてなしに、参加者もすぐに心を開いて、「どうして移住を考えているのか」「どんな生活を求めているのか」「甲賀市って本当に暮らしやすいの?」などなど、さまざまな質問が飛び出しました。
「こっちの人は、それほど他人に干渉したりしない。田舎だからといって、無理に溶け込もうとする必要はない。交流がないからといって、暮らしにくくなるようなことはない。濃くなりすぎず、ほどよい関係を保つのが滋賀の人のいいところ」
「車は必要。うちは1人1台で7台所有している。JRの本数を増やそうと、市長さんが掛け合ってくれている」
「水口までは信号がほとんどないから車で15分ぐらい。運転していて怖い場所もないので、ペーパードライバーでもすぐ慣れると思う」
「星がすごくきれい。星座なんてわからないぐらい、夜空いっぱいに星が広がる」
そんな地元ならではの話が、たくさん聞けました。
地域のよさばかりでなく、交通の不便さや寒さの話もありましたが、市内には高速道路のインターが3つもあり、京都、大阪、名古屋へのアクセスは抜群。京都の大学や会社に通うことも可能ということで、「住みよさランキング・近畿エリア第3位」を実感することができた交流会となりました。
(07)近江牛や赤こんにゃくなど、地元の特産品が詰め込まれたぜいたくなお弁当が用意されていた
(2日目 信楽)
1日目は甲賀市の東端、土山を案内していただき、2日目は、西端、京都府と接する信楽を散策しました。
現在放送中のNHK連続テレビ小説『スカーレット』の舞台となっている信楽は、大きな注目を集めている地域で、全国からたくさんの人が訪れています。観光客は以前の3倍に膨れ上がっているとか。玄関によく置かれている愛嬌あるたぬきの置物は、もちろん信楽焼です。
東京で開催された移住セミナーで話してくれた陶芸家の篠原希さんによると、長石という石がたくさん含まれている信楽の土は焼き物に適していて、昔は登り窯と呼ばれる大きな窯で焼き上げられていたそうです。
今回のプランでは、『信楽 澤善幸せ創造館』を訪れて、陶芸体験を楽しみました。
体験では、ろくろを使った手ひねり、たぬきの置物の絵付け、たぬきの置物の小道具づくりの3つから1つを選びます。参加者4人が手ひねり、1人が絵付けとなりました。自分なりにろくろを回して器を作るという作業に、誰もが熱中して、あっという間に時間が過ぎました。
初めて触れる信楽の土は、最初は冷たく、かたかったのですが、こねているうちに柔らかく、温もりが伝わってくるようになりました。澤善の社長が手ひねりを実演し、わかりやすく指導してくれました。
「『小学生の時にここで作ったコップを今でも使っています』と言いに来てくれる人もいます。それだけ、丈夫なんやろね。子どもたちは私の手元を不思議そうに見ている。茶碗になったり、一輪挿しになったり、慣れてきたら思いのままですよ。つぶして何度も作ってみることです。子どもたちは、『そろそろつぶすぞ』って、その瞬間が一番楽しいみたいで、大きな歓声が上がります」
陶芸体験も、今は大人気で、焼きあがるまでに数カ月の時間がかかるそうです。「もしかしたら、送られてくるころには移住してここで生活しているかも」。そんな思いで現住所を書くのも、移住体験ならではかもしれません。
午後は信楽の中心と地ともいえる『滋賀県立陶芸の森』へ向かいました。この日は女流作家の焼き物展といったイベントも開催されていて、多くの人でにぎわっていました。のんびりとくつろげる芝生の公園に、地元の人たちが楽器を演奏したり歌を披露したり。そのまわりを子どもたちが元気に走っていました。
最後に、今回『甲賀プラン』を考えて、さまざまな場所に案内してくれた安達みのりさんから皆さんにメッセージカードが手渡されました。地元で起業され、多くの人とつながりを持ち、活躍されている安達さん。就職の話をすれば、「あの人が力になってくれるかも」と思いを巡らせたり、カフェを出したいという人には、「古民家の物件探してみますね」と相談に乗ったりと、とても頼れる存在でした。
今回、甲賀市のいいところをたくさん紹介していただいたのですが、なにより、かもしか荘の林社長、澤善の社長、安達さん、土山の皆さん、甲賀で暮らすたくさんの人たちと出会えたことが、移住を検討するなかで、大きな力になると感じた2日間でした。
写真キャプション
(08)たくさんのたぬきが出迎えてくれた澤善幸せ創造館。なぜか西郷さんも!
(09)社長がろくろを回すと、コップや茶わんに早変わり
(10)土に触れ、こねて、かたちをつくる。大人にとっても、とても楽しい時間
(11)信楽焼の絵付け火鉢。『スカーレット』でもおなじみ
(12)牧歌的な陶芸の森で、元気に走り回る子どもたち