まず降り立った地はJR近江長岡駅。そこで今回の移住ツアーの案内人の方と、東京から体験に来られていたデザイナーの方と出会いました。今回のツアー、米原市に移住された先輩移住者の方が、ツアーを企画してくださっているようです。案内人は島根県出身で、約5年前に移住された藤田さん。もともとは滋賀県の琵琶湖近隣にある民間企業で、システムエンジニアとして働かれていましたが、琵琶湖の水源である米原市で、ご自身の理想の暮らしを実現されたいという思いで移住されたとのことです。移住後は前職でのスキルを活かし、フリーランスのグラフィックデザイナーとして働きながら、米原市のまちづくり団体での活動や、身体に優しい自然食料・日用品の販売サービスを起業するなどマルチにご活躍されています。まずは、そんな藤田さんが自身で耕されている田んぼに連れて行っていただきました。
ここでは農薬をあえて使わず、野菜本来の味わいを感じられる自然栽培を手掛けられています。生い茂った草木の中にはトマトやオクラ、ニンジンなど様々な野菜を栽培していらっしゃいました。
またお米も自然栽培で育てられています。あえて耕さず、水を張ったままにされるようです。また、水が綺麗なので蛍が出現するとのこと。「夜に草取り作業をすると、夜空に蛍がたくさん舞っているんです。」都会での非日常を、米原市では日常的に体験することができるのだと思いました。また、田んぼでの作業を通じて、自然から学ぶことがたくさんあるとのこと。ご自身が田んぼから学ばれたことをとても楽しそうにお話しされていたのが印象的でした。
その後、昔、地域の交流施設として使われていた施設に連れていっていただきました。当時はユリ園を併設し運営されていたそうですが、獣害の影響で閉園してしまったとのことです。そこから使われることなく放置されていた施設を管理するかわりに、好きに使わせていただけることになったとのことで、米原市でとれた食材を楽しめるレストランや、農業体験、ヨガ、森林浴ができる空間をつくりたいとのこと。「ここに来て、一日ゆっくり過ごしてもらうことで心も体も癒されて帰って行ってほしいんです。」と藤田さん。都会にはない資源がある米原だからこそできる挑戦がそこにはあると実感しました。
その後、自伐型林業(ここでは山を管理する人がいないので、管理する代わりに伐採した木材を好きに使わせてもらっている)の現場の見学をした後、地元の飲食店に連れて行っていただきました。その地元の飲食店でも京都から移住された方にお会いしました。何やらアーティストの方々と打合せをされている模様。お話を聞いてみると、旦那様が林業をやりたいとのことで、家族で京都から移住されたとのことらしいですが、奥様はもともと京都で編集者として働かれていたご経験を活かして、米原市で企画展を実施するとのこと。(すごい!)奥様も「まさか自分が米原市で企画展を実施するとは…」と驚かれているのが印象的でした。また米原市に移住してから京都市内から友達が来ることが多くなったとのこと。新幹線が停まることもあり、移動がしやすいようです。実際に打合せに参加されていた方も神戸方面から新幹線で来られていました。また、中部国際空港まで車で約1時間とのことで、自然豊かな環境に身を置きながら、市外の方との交流も容易な土地だと感じました。その後、奥伊吹スキー場で開催される「伊吹の天窓」という地元のイベントにスタッフとして参加しました。このイベントは約9年前に、当時地域おこし協力隊で米原市に来られた移住者の方々が神社で主催したイベントがきっかけのようです。その後、その輪がどんどん広がり、会場も夏のスキー場に変わり、今では市内外からたくさんの方々が来られる地域最大のイベントにまで発展しました。イベントではアーティストによるライブや、移住者の方々が作るこだわりの料理を味わうことができるなど、都市部の画一的なイベントとはまた違う、米原市ならではの魅力がたくさん感じられるイベントになっていました。また、イベントを通じて出会う皆さんは、本当にイキイキされている方が多く、本当の幸せや豊かさについて考えるきっかけになりました。
(移住者の方が出されているお店の写真)
スタッフの仕事としては、たき火を組むのがメイン。たき火を組んだ後は、たき火に集まってくる参加者の皆さんと交流したり、大自然の中で素敵な音楽や映像作品にふれることができたりと、非常に楽しいひと時をすごすことができました。
(音楽ステージの写真。幻想的です。)
今回のイベント後、伊吹の天窓は一度休止になるとのことですが、次年度以降は違う形で新しいイベントを計画中とのことです。
その日はスキー場のロッジにスタッフの皆さんと一緒に泊まらせていただき、1日目が終了しました。
2日目。夏のスキー場で目覚める朝。人生初の体験です。スキー場には主催者である早川鉄兵さんが作られた動物たちの切り絵がたくさん並んでいます。
早川さんは元々大阪でカメラマンをやられていたとのことですが、米原市に移住後は伊吹の天窓で、ご自身のライフワークであった切り絵を披露されたのをきっかけに、それが仕事になっていったとのことです。今では大手自動車メーカーのカレンダーに採用されるなど、米原市にいながらもその活躍のフィールドを全国に広げていらっしゃいます。そんな早川さんが作られた切り絵の動物たちの近くで、朝から元気に遊ぶ子供たち。そこには米原市で育まれたアートと、自然と、人が違和感なく、混ざり合っていました。
スキー場で朝食をいただいたあとは空き家見学ツアーへ。私たち移住ツアー参加者以外にも、滋賀県立大学の学生の方や、米原市空き家研究会の方々などと一緒に、まずは築100年を超える古民家に。古民家は100年、200年住むことを想定して建築されているため、現代の住宅よりもつくりがしっかりしているとのことです。また、昔は部屋の中で牛を飼っていたという部屋もあり、現代の家では味わえない面白いストーリーがたくさんありました。
その後、別の空き家を見学に。次の空き家も部屋と窓がたくさんあるので、開放的かつ風が通り抜ける気持ちの良い空間でした。また、近接している田んぼも好きに使っていいということです。お値段は借りてくれれば1万円でも、2万円でもいいとのことでかなりの破格。ここでゲストハウスでもしながら、自分たちで農業をしたりする生活も楽しそうだなと勝手に妄想をしてしまいました。ローコストで自分がやりたい生活を実現できるということも米原市に住む魅力かもしれません。その後は移住者の方がセルフリノベーションされた古民家へお伺いしました。
ガラス職人の林さんは元々は栗東市のご出身。住宅メーカーの家に魅力を感じなかったことに加え、ご自身の制作活動の拠点がほしいという思いで米原市へ移住されたとのこと。お部屋の中も見せていただきましたが、セルフリノベーションされたとは思えないほど素敵な空間が広がっていました。
約2年かけて古民家をセルフリノベーションされたとのことです。リノベーションされている当時はキッチン付近にテントを張り、泊まり込みで作業をされていたとのこと。その後、ある程度住める環境になったところで、家族で移住されたようです。木材も米原市の産材を活用していらっしゃるため、画一的な住宅と違い、木のぬくもりが溢れる、開放的な空間でした。
また普段の仕事とは別に、モノ作りが大好きな人が集まるクラフトマルシェ「IBUKI Country Fair(イブキカントリーフェア)」を計画されているようです。奥様と二人で企画され、協賛企業も自分たちでみつけてきたとのこと。「職人の方が自分で作った作品を発信できる場所をつくりたかったんです。」色んな方々の思いや自身の思いを、地域を巻き込んで形にしていく姿はとてもすてきだと思いました。また、そんな方々の思いをサポートしてくれる方々や風土が米原にあるのだと感じました。
林さんのお宅を訪問した後は山菜やイワナ料理が楽しめるお店「若いぶき」で昼食を。米原市のランドマークでもある伊吹山をみながら食べるご飯は格別でした。
そしてツアーの最後には琵琶湖に。
湖だと言われなければ海だと思ってしまうくらい大きい琵琶湖。そこでもたくさんの方々が思い思いの時間を過ごされていました。私も雄大な琵琶湖を眺めながら、滋賀県の魅力を体全体で感じることができました。その後、駅まで送っていただき、2日間の移住体験ツアーを終えました。
ツアーを終えて、米原市は自然環境が素晴らしいだけでなく、そこに集う人々が、魅力的だと思いました。大阪から移住された自然農に挑戦されている方、京都から移住して林業に挑戦されている方のように、恵まれた自然の中で、自分の実現したい暮らしや仕事に挑戦したい方々にとって、これほど魅力的な場所はないと思います。私も今回のツアーを通じて、米原市だからこそ挑戦できることがたくさんあるのではないかと実感しています。切り絵作家の早川さんのように米原市に移住して、地域のために挑戦する中で自身の新たな可能性を切り拓かれた方もいます。私も自身の人生に、大自然の中で自分がやりたいことに挑戦するという選択肢が増えました。この記事をみてツアーへの参加を悩まれている方や移住を検討されている方がいらっしゃいましたら是非足を一歩踏み出していただければと思います。そして、今回お世話になりました皆さま、本当にありがとうございました。